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Vol.10 「年の初めに想うこと」

西暦2000年が明けた。今年はどんな年になるんだろう。僕は相変わらずシーカヤックでウミアッチャーしていることは間違いない。

今年の正月はコンピューターの2000年問題で、旅行には行かず、家族そろって家でのんびりという人も多かったのではないだろうか。家族、やっぱりいいもんだ。

だれでもそうだろうが、僕も結婚して子供ができたときは本当にうれしかった。そして家族を守らなければならないと思ったとき、一生の仕事として選んだのがシーカヤックだった。これなら負けない。いや負けられないのである。家族ができた途端、そんな気になるんだから、男って単純な生き物だ。

二人の娘は、4、5歳のころからシーカヤックに乗せている。下の娘は二人艇の前の席でよく寝たもんだ。よほど気持ちいいのだろう。もしかしたら、海に浮いている感覚が母親のおなかの中にいた時の感覚に似ているのかなあ。確かに僕ものんびり漕いでいるときは気持ちよくてボーっとしてしまうときがある。シーカヤックで海に出るということは、胎内回帰のような感覚があるのかもしれない。

その娘たちも小学校5、6年過ぎたころから一緒に乗らなくなった。まあ、女の子だから仕方がない。でもあと10年もすれば、また一緒に乗れる日がきっと来ると思っている。その日を楽しみにしておこう。

シーカヤックと親子、というと『息子とカヌー』という本を思い出す。これは中年男が離婚のショックから立ち直るために二人の息子とカヌーでカナダからアマゾン川河口までの旅にでるというノンフィクションだ。のんびりカヌーで旅するなんていいなあ、と思ったら大間違いで、メキシコの軍隊に身ぐるみをはがれるわ、嵐には遭うわ、踏んだり蹴ったりの旅に、とうとう次男は音をあげて途中で帰ってしまうんだから。そんな旅を続ける二人は、ささいな事でけんかして口をきかない日もあるけど、親子のきずなは一層深まり、ついに2万キロを漕ぎ切る。父親はこの旅の後、自転車やカヌーで世界各地へ出掛け、一方旅の間ギターの練習を続けていた長男は、後にプロのギタリストとして活躍することになる。親子でのカヌーの旅を機に、それぞれが自立して生きていく、というのがさわやかでいい。

沖縄でも、僕の知り合いの仲地さんという人が数年前、当時小学6年生だった息子と夏休みに二人乗りのシーカヤックで沖縄本島を一周している。海という自然の中では優しさだけではすまされない。それが時には命取りになることだってある。父親は息子をしった激励し、子どもは父親をサポートする。そこには男同士の本気のぶつかり合いがあるはず。男は海で強くなり、優しくなれると思う。昔の映画のセリフじゃないけど、「男は強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格はない」のだ。と、年の初めはキメておこう。

(2000年1月)


2002年04月10日(水)