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Vol.07 「冒険家・河野兵市さんと漕ぐ」

河野兵市さんという人をご存知だろうか。

日本人として初めて北極点単独徒歩到達を成し遂げたり、リヤカーを引っ張ってサハラ砂漠を横断したり、アラスカのユーコン川をイカダとゴムボートで下ったりと、世界を股にかけた筋金入りの冒険家だ。

彼が次に挑戦しようとしているのが2001年に北極点を出発し、徒歩とシーカヤックで故郷の松山まで帰ってくるという旅だ。そのトレーニングを兼ねて、今年の6月、河野さんは沖縄本島から四国の松山までシーカヤックで漕ぐという旅に出た。出発したのが6月20日、僕は宜名真から辺戸岬までを一緒に漕いで旅立つ河野さんを見送った。その時の約束が、大分の佐賀関からゴールの松山まで再び一緒に漕ごうということだったんだ。

今年の夏は台風が幾度となく接近して心配していたけど、河野さんは沖縄から島伝いに鹿児島を経て宮崎まで北上。途中、ロシアへの調査で一時中断したあと、9月4日から後半の旅がスタート。

宮崎、大分と北上、そして河野さんとの約束の日が来た。9月16日、3ヵ月ぶりに再会した河野さんはたくましく日焼けしていた。

翌17日、大分の佐賀関を出発、豊予海峡を渡って佐田岬を目指す。佐賀関から佐田岬までは20キロほどで、そうたいした距離ではない。しかし、ここは潮の流れが速いことで有名。最も速い所は時速6ノットもあるらしい。

6ノットだって!向かい潮だと全力で漕ぎ続けなければ前には進まない速さじゃないか。できればそういう所は漕ぎたくないなぁ、と思っていたらまんまとはまってしまった。前の方から波が押し寄せてきているなぁと思って気付いたときにはその波の中。実際には、波が押し寄せて来たのではなく、僕たちの方がどんどん吸い込まれていっていたんだ。

2時間、ほぼ全力で漕ぎ続けてようやく愛媛の佐田岬に到着。この豊予海峡、地元では速吸(はやすい)瀬戸と呼ばれているんだけど、まさしく速吸だよなぁ。

昔のことを言うと、僕が学校を卒業して初めて就職した所がここ愛媛。実に29年ぶりだ。それもシーカヤックで来れるなんて、不思議な縁だ。29年ぶりといっても海から見るのは初めての光景ばかりだ。だから1日中漕いでても飽きない。入りんだ入り江、その奥にはのどかな漁港があったり、静かな漁村があったり、シーカヤックでのんびりウミアッチャーするにはもってこいの海だ。

そして9月19日、無事ゴールの松山に到着。この日は地元のシーカヤック十数人が伴漕してくれた。ここでの河野さんの人気はすごい。彼はこの町のヒーローだ。いや今までの経歴からすれば、日本を代表する冒険家の1人と言っていい。河野さんの名がこれまであまり知られていないのも、彼があまり人前に出たがらなかったからなんだ。

別れる前、河野さんはこう言った。

「諸喜田さん、今度は一緒にベーリング海峡を横断しようよ」

うーむ、やたら血が騒ぐことを言ってくれるわい。

時間と資金があればぜひ行ってみたいよなぁ。

(1999年10月)


2002年04月10日(水)